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情熱のアッパカパー要塞

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リート・ボンドネードは言った。細心の注意深さがボンドネード・ファミリーの冒険屋としての依頼達成率の高さに貢献しているのであった。競合ルールである以上、競争相手のパーティは敵であり、早く脱落させる必要があった。
 「相変わらず酷い、やり方ね。上の兄さん達が自分達の首を、あなたが狙っているって怯えているわよ」
 コーネリーは言った。
「根も葉もない噂だ。お前が撒いているのじゃないのかコーネリー。家長の座が欲しいのか」
 リート・ボンドネードは言った。
「まさか。ボンドネード・ファミリーは男系よ女には家長に就く権利は無いでしょ」
 コーネリーは言った。
「だが、お前の息子を家長に就けて実権を握ろうという野心は在るのじゃないか」
リート・ボンドネードは言った。
 「私の息子達には、そんな甲斐性は無いわよ。ケーやウッゾを見ても、そんな野心が在るとは思えないでしょ」
 コーネリーは言った。  
 「まあ、いい。その話は置いておこう。一つ重要な問題がある。W&M事務所が未だ、作戦を決めていないことだ」
リート・ボンドネードは言った。こちらが精霊を使っている事に感づいているとも思えなかったが。用心にこしたことは無かった。
「戦士と騎士と魔術師のパーティね」
 コーネリーは言った。
 「そうだ。奴等が作戦を立てなければ始末のしようが無い」
リート・ボンドネードは言った。
「あの少女の魔術師が首に付けていたケープ止めの紋章は四大元素の紋章よ。あれを付ける魔術師はミドルン王国では「電光の裁定」学派と「猛き炎」学派の2つのみ。どちらもエターナルに比べれば劣った古臭い学派だけれど特に「電光の裁定」学派は戦闘には向いている事で定評のある学派よ。「猛き炎」は完全に過去の遺物ね」
 コーネリーは言った。
 「弱い相手だからといって油断することは無い。競合相手は確実に仕留めるのみだ」
 リート・ボンドネードは言った。
「どうする気。さっきの返り討ちでリッキーンは影の鳥を使いたがらないわよ」
コーネリーは言った。
 「W&M事務所相手にはイオラを使って色仕掛けをさせる。そして奴等の侵入ルートの情報を引き出して来させる。そして我々の作戦に組み入れて始末する」
 リート・ボンドネードは言った。
これがボンドネード・ファミリーの中で一番の仕事の達成率を誇るリート・ボンドネードの仕事のやり方だった。
「それでは、アッパカパー要塞の電話番号をザラシ達から聞き出すか」
 リート・ボンドネードは携帯電話を操作した。



 スカイ達3人は地図を見たまま煮詰まっていた。 
「地図見ても、上手くいかんな。スカイ。お前はどうするつもりなんだ。地下トンネルを通るつもりか」
マグギャランは頭を掻きむしっていた。
スカイも地図を、ずーっと見ていて、いい加減ウンザリしてきた。
 「まあ、それも仕方が無いだろうな。常識で考えたら。イシサ聖王国に入ってアッパカパー要塞に潜入するのは至難の業だ」
 スカイはマグギャランに答えた。
 「実はなスカイ。俺に秘策が在るのだ。今、ふと閃いてピンと来た。何て今日の俺は冴えているのだ。カーマイン女卿のような超絶美女を見たせいかもしれん。美しいものが人間の感受性を豊かにするのだろうな」
 マグギャランは何か自分一人で勝手に驚いた顔をしながら言った。
 「何だよ」
 スカイは言った。
 「今は秘密だ。明日話す。今日は、それぞれの与えられた部屋に帰って眠るとしよう。俺に任せておけ。これは名案も名案の超名案だ」
マグギャランは自信満々な顔で言った。
 「それじゃ、お前に任せるぞ」
 スカイは言った。地図を見ていたコロンも頷いた。
「ふ、だが、これから、騎士道的には、美女の、お相手をせねばならぬという、お務めが在るのだな」
マグギャランはニヤけた、だらしない顔で言った。
 「あのカーマインって女は止めとけよ、また変な女に間違いねぇよ。つい、この間の森人の女の時だって酷い女が居たじゃねぇかよ」
スカイは言った。
 マグギャランは女に声を掛けると、大概問題の在る女ばかりを引き当てるのだ。
 奴が何で酷い女に引き寄せられるのかは分からないが、スカイが見てきた経験からすると奴は女運が悪いとしか言いようが無かった。
 「バカな。思い立ったら吉日、大安、友引、祝祭日。即ち成せば成り、成さねば成らぬ」
マグギャランは前髪を、かき上げて言った。スカイは苦い顔をした。
 「大体、あの女の方が、お前より、絶対強いぞ。ローサルとの立ち回りを見ただろう。あんな虎か豹の様に背中がしなる動きは人間業じゃねぇよ」
 スカイは言った。確かにカーマインが絶世の美女の類で在ることは間違いは無かったが、あんな刃物女の何処が良いのかスカイには判らなかった。
 「問題は愛の深さなのだぞスカイ。愛の力は火事場のクソ力を凌ぐパワーを秘めている」
マグギャランはニヤけた、だらしのない顔をして何度も頷きながら言った。
コロンが欠伸しながらマグギャランの脇を通っていった。そして扉を開けて自分の名札が付いている隣りの部屋の方へと歩いていった。
マグギャランは、手鏡を取りだして、髪型をチェックして、ゴロジの香水とローズ・ミントのブレス・ケアを口に吹き付けてヘロヘロした足取りで廊下に出ていった。
 スカイはマグギャランの奴がカーマインか取り巻きの連中に半殺しにでも遭いそうに思ったが。言わないで置いた。世の中経験しなければ判らないことも在るからだ。まあ競合ルールの制約上殺される事は無いだろう。スカイは首を横に振ると自分の部屋の扉を閉めてドアの鍵を掛けた。明日は六時から仕事の開始だから、早く眠るにこしたことはなかった。



ミラーナ・カーマインは眠っていた。だが、扉の外の方が騒々しかった。目を覚まして起きた。
ミラーナの寝ているベッドの横の床で眠っていたラーンも上半身を起こして短剣を構えている。
「姫様どういたしますか」
 ラーンが言った。
 「よくあることです」
ミラーナは言った。
 「私が追い返してきます」
 ラーンが言った。ラーンはパジャマの上から革の上着に袖を通した。
 「任せます」
 ミラーナは言った。
 ラーンが扉を開けた。
「何なんだ君は」
 ロード・イジアの声が聞こえた。
呆れたことにロード・イジアが夜這いに来たようだった。
 「何なんですか、あなたは」
 W&M事務所の騎士の声が聞こえた。
「だから、何しに君は、ここに居るのかねマグギャラン君」
「野暮用だと言っているでは無いですか。それより、あなたこそ、何で、ここに居るのですかロード・イジア」
 「重要な政治的な話が在るのだ」
 「それは如何なるものか」
 「国家機密であるが故に容易く他言は出来ぬ。君の野暮用とは如何なるものか」
 「野暮は野暮ゆえ語るに足らんのであるのだ」
「もう夜中です。お引き取り下さい」
 ラーンが言った。そして音を立てて扉を閉じた。



鍵が外れる音でスカイは目が覚めた。
スカイは反射的に扉の方を見た。
扉が音もなく開いて人が入ってきた。