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情熱のアッパカパー要塞

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「戦斧隊は、タビヲン王国と戦っていた「混沌の大地」の先住民や亜人種がコモンから来た人間の義勇兵達と共に結成した戦斧を使う戦士集団だ。奴等は混沌の大地でしか栽培出来ないマチョキン麦という筋肉を増強させ脳の神経の伝達を阻害する穀物を摂取して異常に発達した筋肉を持っている。モンスター・サーカスは「二重の螺旋学派」の魔術師であるワールワルズが作り上げた怪物達を使う。「二重の螺旋学派」は奇怪な怪物を作り出して使うから、注意をしておけ。用心棒達の中には、混沌の大地戦争で活躍した傭兵団「屍」が含まれている。団長の屍はタビヲンの四剣士と呼ばれた剣の達人の男だ。この男や幹部クラス達と戦うわけにはいかない。遭遇したら確実に殺されると思っておけ」
 リート・ボンドネードは言った。
 「で、わたしに作戦が在ります。この最大の障害となる傭兵団「屍」を使って他のパーティの排除に使うのです」
 コーネリーは言った。
 「わお、なかなか卑怯じゃん」
 17歳のリッキーンがクスクスと笑いながら言った。
そしてリート・ボンドネードの視線に気が付いて首をすくめてバツの悪そうな顔をした。
 「ケー、リッキーンを5発殴れ」
 リート・ボンドネードは言った。
 「判りました」
 ケーがリッキーンに向かって歩いていった。
 リッキーンが怯えた顔をした。
 ケーは徒手武術を会得しているからだった。
そのことはリッキーンも知っている。
「歯を食いしばれリッキーン」
 ケーが言った。
 リッキーンが観念した顔で目と口を閉じた。
 ケーがリッキーンの横っ面をフック気味の拳骨で殴りつけた。
 一発。
 手加減などしなかった。これでいいのだ。
 一発目でリッキーンは腰から崩れ落ちて倒れた。ケーは馬乗りになってリッキーンの顔を更に殴りつけた。
二発。
 二発目で気絶した。
 だが殴り続けなければならない。
 三発、四発、五発。
 リッキーンの顔が変形していった。
 ケーは立ち上がった。
 そしてリッキーンは床に大の字になって気絶していた。
「ケー、リッキーンにカツを入れろ」
 リート・ボンドネードは言った。
 「判りました」
 ケーはリッキーンの鳩尾に拳でカツを入れた。
 「げほっ!げほっ!」
 気絶していた。リッキーンが上体を跳ね起こして起きあがった。
 「お前が失敗をする事によって、我々全員の命が無くなる事もある。よく覚えておけ。必要な時以外は喋るな。今は、仕事中だ」
リート・ボンドネードは言った。
だがリッキーンは怯えた顔をしていた。  「返事をしろ」
 リート・ボンドネードは言った。
「わ、判りました」
 リッキーンは涙を流しながら言った。
「ケー。治療魔術でリッキーンの傷を直せ」
 リート・ボンドネードはケーに言った。
 「判りました」
 ケーはリッキーンに近づいていった。
 リッキーンは怯えた顔をした。
「リッキーン。ケーが回復させたら。「影の鳥」を使え。そして、今、作戦会議をしているであろう四つの他のパーティの情報を集めろ。集める情報は奴等の作戦及び侵入ルートだ」
 リート・ボンドネードは言った。
コーネリーが咳払いをした。
 リート・ボンドネードは顎で促した。
コーネリーが手帳を読んで説明を続けた。
「「屍」と言う男は、ただ剣を振り回して命の取り合いをするのが好きなだけの男です。タビヲン王国の黒竜太子一党の仲間になった後、タビヲンの四剣士の一人としてタビヲンの内戦、混沌の大地戦争では巨大な混沌悍馬を使った四頭立ての戦車を乗り回す3メートル近くの大男達で構成された「絶輪軍団」を騎馬の軍勢で潰走させて名を馳せましたが。結局はタビヲンに留まらずに、主立った部下達を連れて別の国々を渡り歩いています」
 コーネリーがリート・ボンドネードを促した。リート・ボンドネードは頷いた。
 「我々は、この傭兵団「屍」を利用して、「灼熱の翼」のソークス・バンドや「カーマイン団」のジェラール・ジェラルドなどの腕の立つ武芸者達を抹殺する事を狙う。ザラシ達の情報では…」
リート・ボンドネードは説明を続けた。



 ミラーナ達、カーマイン団はロード・イジアとマッタール大臣と会談を行っていた。
「我々は、ミドルンの貴族勢力を糾合してカーマイン大公国を復興する事が目的なのです。イジア国の君主である、あなたにも鋸卿に対する包囲網に参加して貰いたい」
 ナバーガーが言った。
「鋸卿はミドルン王家に忠誠を誓っているのではないかね。君の父上を大公としているではないか」
 ロード・イジアがミラーナを見て言った。
「鋸卿は共和制を敷くと言いましたが実際はカーマイン共和国は、鋸卿の殺人鋸に怯える恐怖政治の場所でしかないのです。終身議長制の議会の何処が民主主義だと言うのですか。鋸卿は完全なる独裁者です」
ミラーナは言った。
「鋸卿を支持する者達は、エターナルやフラクターの科学技術で急速に力を付けた地代地主達や産業資本家達です。彼等は同じ地代地主や産業資本家出身者達が任官するミドルン王国の官僚達と結びついています」
ナバーガーが言った。
「で、カーマイン家を支持することによって、我がイジア国に何の見返りがあるのかね」
ロード・イジアは言った。
 「そうである。ギブ・アンド・テイクが交渉の原則なのである」
 マッタール大臣が言った。
「我々を支持することにより、鋸卿の恐怖支配を終焉させることによって、イジア国の未来の君主権の確保の保険とすることでは御不満でしょうか」
ナバーガーは言った。
「いまいち良くわからんな。マッタール大臣解るか?」
 ロード・イジアは困惑した顔で横に据わっているマッタール大臣に言った。
 確かにナバーガーの言い方は解りづらかった。マッタール大臣も首を傾げていたが口を開いた。
「このイジア国には、そのような保険などは必要ないのである。質実剛健、国民皆兵、猪突猛進、玉砕覚悟、散華花道こそがイジア国の国民性であり。何等問題は無いのである」
マッタール大臣が言った。
「カーマイン大公国で起きた事は、あなたのイジア国でも近い将来起こるという事です」
ミラーナは言った。
「それは大丈夫である。イジア国の国民はアッパカパーと言う目の前の共通の敵が居る限り一致団結して戦い続ける事によって難しい議会やら革命などに目を向けることは無いのである」
 マッタール大臣は自信満々な声で言った。
「私も、そう思う。先祖代々受け継いできた、この統治方法はイジア王家の伝統であり、未来永劫と続く善と悪との戦いなのだ。当然我々が善の側でアッパカパーのクソバカヤロウは悪の側ではあるが」
 ロード・イジアは笑いを浮かべながら言った。
 「ですが、ミドルン王国自体が議会制に変わったら、どうする、おつもりか」
 ジェラールが痺れを切らして声を荒げた。
 「そんな事など在ると思うかねマッタール大臣」
 ロード・イジアは言った。
 「いや、無いのである」
マッタール大臣は言った。