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情熱のアッパカパー要塞

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 「ああ、あのニワデル博士とスローター博士が使う7メートルもある巨大な金属のバケモノだな。あんなデカイ物を使って正面から城攻めを行うと言うのか?」
 アッパカパー伯爵が言った。
「いえ、ロボットの全高は二メートルぐらいだそうです」
 「普通の人間よりも少し背丈が高いだけではないか。全然強そうではないな」
「ええ、そう思います」
 「それではメンバーを読み上げてくれ」
 プロジェクターに髪の毛を刈り込んだ金髪の男性が映し出された。
「リーダーのソークス・バンドは、タビヲンを除いたコモンの全国家で四年に一度開催される大武術大会の個人戦の部で十三年前に優勝したという華々しい経歴を持っています。ミドルン王国の国民的な英雄です。ユニコーン流槍術という槍を使った武術の達人です。現在三十五歳の男性です」
「何?あの大武術大会で優勝したのか?あれはコモン中の騎士や戦士や剣士達が名声を求めて参加する一大イベントだ。そういえば、名前を聞いた事が在るな。あの頃はテレビが無かったから中継は、されていないが。今はテレビで中継されている競技会だからな」
「それでは次に移ります。マウド・ベルターはベルター男爵領の三男の騎士です。グリフォン流という剣術の免許皆伝の腕前です。現在三十五歳の男性です」
 茶色い癖毛の男性が映し出された。
 「印象の薄い男だな」
 「ええ、私も、そう思います。それでは次に行きます」
 金髪を結んだ子供のような格好をしてる少女が映し出された。
「魔術師のリッカ・グルンは。最近フラクターで科学製品を作って有名になっている「鋼鉄の歯車」学派の魔術師です。ロボット使いは、この女です。以前に雑誌に載っていたノアム・グルンの妹だと書かれています」
 「また女の魔術師か?」
「ええ、そうです年齢は16歳の少女です。それでは次に移ります」
 黒髪の女性が映し出された。
「医師のルエラ・ジパーズはバンド総合大学の医学部を卒業した外科の医師だそうです」
「女の医者か?」
「そうです。現在二十六歳です。次はルージェイ・コイルです」
 銀色の尖った髪型の男が映し出された。
 「バンド男爵家に仕えるスカウト団「影走り」の長男だそうです」
 「長かったが。ようやく、全てのパーティの履歴がハッキリしたな」
 「最後のザコ、パーティは、どうしますか?」
 「一応、報告しろ」
「W&M事務所は二年前に登録された冒険屋のパーティです。最初はリーダー登録されている戦士のスカイ・ザ・ワイドハートと騎士のマグギャランの二人だけのパーティです。現在は更に三ヶ月前に女の魔術師コロナ・プロミネンスが加わっています」
「何?何故、騎士が戦士よりも下に登録されて居るのだ」
 「さあ、判りかねます」
「年齢が上なのか?」
 「いえ、あの、このスカイ・ザ・ワイドハートは14歳の男性です。完全に子供ですね」
「何?14歳の少年がリーダーなのか」
プロジェクターに映し出された履歴書にはアカンベーをした金髪の少年の顔写真が映し出されていた。
 「ええ、そうです」
「騎士の方は何歳だ?」
 「騎士のマグギャランは21歳です」
プロジェクターに黒髪の整った顔立ちをした青年が映し出された。だが口元をスカーフで隠している写真だった。
「間違いでは無いのか?」
 「女魔術師のコロナ・プロミネンスは17歳です」
帽子を被り眼鏡を掛けた三つ編みの少女が真っ赤な顔をして映し出された。
 「やはり子供ではないか」
 「ええ、そうです」
「何故、こんな見るからに弱そうなパーティを雇ったのだ?」
「漆黒の外套の独自調査によればダンジョニアン男爵の迷宮競技で優勝と書かれています」
「何だ?それは?」
 アッパカパー伯爵は怪訝に思った。
 「さあ、判りかねます。何でしょうか」
 ベシアも判らない顔をした。
「それは裏のケーブルテレビで流されている有名な殺人迷路ゲームですよ。まだやっていますが最近は子供の遊びになってしまいましたけれどね」
ワールワルズ団長が人面犬を抱えて撫でながら言った。
 「ゲシシシ。団長いつも、すっていたじゃん」
人面犬が言った。
「全部聞かせて貰いましたよ」
 仮面を被った男装の女が立ち上がった。
全身から光のような輝くオーラを発していた。だが、そのオーラは、どこか闇の暗さを持っていた。
 「おおっ、傭兵団「屍」の副団長、冬風殿。ところで団長の屍殿は何処に?」
 「いま深酒で二日酔いに掛かって居ます」
 冬風が言った。
 「二日酔いで大丈夫なのだろうか」
 ベシアが言った。
 「ええ。剣さえ握れば、二日酔いでも団長は無敵です」
 冬風が言った。
 「私のモンスターを使えば、冒険屋などタダの餌同然ですよ」
 ワールワルズが人面犬を抱いて撫でながら言った。
 「戦斧隊は、夢を諦めない」
 ゴグがダンベル・トレーニングをしながら言った。
冬風が身体を揺らして前に出てきた。
 「それでは、今の報告を加味して、私が作戦を考えました。皆さん。私の組んだ作戦を聞いて下さい。このアッパカパー要塞の地形と集められた戦力を考慮して作られた作戦です」
 冬風が脇に抱えているバインダーを開いて言った。
 アッパカパー伯爵達は冬風の方を向いた。そして冬風は説明を開始した。冬風は、タビヲン王国の黒竜太子一党の女軍師として有名だった。



「しっかりと、確認することがある。今回の仕事には不味いことに。アッパカパー要塞には厳重な警護が敷かれている。何処からか情報が漏れているらしい」
 リート・ボンドネードは集まった一族のメンバーを見回しながら言った。
 「我々のバックアップをしている、イシサに先に潜入させたボンドネード一族のザラシ達からの情報では、アッパカパー伯爵は用心棒を雇い入れた。仕事の内容は当初の予定よりも難航する事が予想される。死者が出るかもしれないが各自ボンドネード一族の冒険屋として覚悟を決めろ」
リート・ボンドネードは言った。
「我々ボンドネード一族はコーラーに従うまでです」
 ケーが言った。
「それでは、わたしが、説明しましょう」
 リート・ボンドネードの妹のコーネリーが言った。そして手帳を見た。「テダ」のブランド物の手帳にはボンドネード一族が使う独自の速記文字で書き移された携帯電話での通話内容が記されていた。 
 「アッパカパー伯爵が雇った用心棒達は傭兵団「戦斧隊」、モンスター・レンタル・サービスの「モンスター・サーカス」、「殺人ロボット虐殺王と暴虐王」、傭兵団「屍」」
コーネリーが読み上げた。
リート・ボンドネードは説明を始めた。