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ベイクド・ワールド (下)

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 本物の暗闇と沈黙に包まれた世界。俺は徐々に恐怖に支配されるようになった。暗闇の世界に飲み込まれていく。怖いと思わないか。分かれ道を何度も選択してきたんだ。もう戻れる保証なんかまったくないんだ。どれだけの別れ道を選んできたのかももう分からない。ただ、徐々に呻き声が大きくなっていくのは確かに感じた。もうこれ以上進むことができない。そう思った時だ。扉に行きあたった。扉の向こうから確かに男の呻き声のようなものが聞こえてくる。俺はその扉を開けた。
 そこはアパートの一室だった。アパートには部屋の真ん中に椅子が置かれていて、一人の男が縛られていた。顔には黒いビニール袋のようなものが被されていて呻き声が漏れていた。男が呼吸するたびに黒い袋のようなものは膨らんだり、萎んだりした。まるで拍動する黒い心臓のようだった。俺は男に近づき、その黒い心臓に触れた。触れた瞬間だ。男の筋肉が硬直するのが分かった。俺は黒い袋を両手でつかみ、勢いよく引っ張りあげた。
 そして、俺は見てしまったんだ。俺はそれを見てはいけなかった。見るべきではなかったんだ。それこそが、俺を変容させた要因であり、俺が死ななくてはならない要因だった。
 
 もう一度ここで俺は君に問うべきだと思う。

 俺が見たものを知りたいかどうか。もう一度よく考えて欲しい。

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