窓のむこうは 続・神末家綺談7
(うまかったな、あいつらんちで食った飯・・・)
コンビニ弁当ばっかりの日々だから、あの優しい味の和食が恋しかった。かと言って、連絡先を交換しているわけでもないし、約束があるわけでもない。穏やかだが、この胸中をわかってくれる者は彼ら以外にいない。それが寂しくて、なんだか物足りないのだった。
そういうものかもな、と冷めた心で思う。別に友達でもないし。伊吹は小学生だし、瑞に至っては結局よくわからないし。
だけど同時に、心のどこかで期待してしまうのだ。もしかしたら、心のどこかで繋がりが生まれていて、またどこかで一緒に笑えるかもしれないと。
(別に二度と会えなくなるわけじゃないんだし・・・。誰か誘って遊びに行こうかな・・・)
スマホを片手に立ち上がろうとしたそのとき。
ピンポーン
チャイムの音。来客とは珍しい。ドアを開けて、雪也は驚いた。
「雪也くん、元気だった?突然ごめんね!」
人懐っこい笑顔が飛び込んできて、雪也はあっと声をあげた。
「伊吹!瑞も?」
ドアの前にいたのは、伊吹と、あのミルクティーの髪の瑞だった。伊吹は両手に紙袋を提げている。何やらいい匂いがしていた。
「ほら伊吹、この顔だよ。絶対俺らに会えなくて寂しくなってた頃だって」
「瑞、そういうこと言うなってば。雪也くん、いま大丈夫?」
「あ、ああ・・・大丈夫だけど・・・」
「京都の親戚からたくさん野菜もらって、おいしいものいっぱい作ったんだよ。さといもやら、まつたけやら・・・。うちだけじゃ食べ切れないから、一緒にどう?旬のものだからおいしーよ」
賑やかな声が響き渡り、懐かしいような泣きたいような気持ちになった。ああ、俺寂しかったんだなと思う。伊吹と、瑞と、そして少女との血の通ったやりとりを通して、孤独に慣れていたはずの自分に、人間らしい感情が戻ってきたかのような感覚だった。
作品名:窓のむこうは 続・神末家綺談7 作家名:ひなた眞白