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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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窓のむこうは 続・神末家綺談7

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未来は変わる



日々は静かに流れていく。あの、小雨の街を駆け巡ったことが嘘のように、平凡で何の変化もない日常。
雪也は学校に通い、部活にも復帰した。授業を受け、友だちと遊び、ばかな話で盛り上がる。そんな日常の隙間で、時折思い出す。少女のことを。

あの封筒は、瑞の提案で匿名で警察署長あてに郵送した。雪也らが少女の隠した告発状を見つけた理由は、他人に話しても決して信じてもらえるものではなかったからだ。

それでも、事態は少女の望むほうへと動いた。
母親の恋人は逮捕、母親は事情聴取を受けている。雪也はそれをニュースで見た。少女の仕掛けた時限爆弾は、無責任で残酷な大人を裁き、弟を守った。あのファイルを見つけてから、二週間が経っていた。

(こうして思い出しても・・・今はもう、あのときみたいに悲しくないな・・・)

夕暮れ。日が沈んでいく窓の外を、雪也はソファに身を沈めてみていた。
あの夜の激しい感情が嘘のような、静かでひたすらに穏やかな気持ち。少女の満足そうな微笑を見ることができたからだろうか。
あの夜、この窓の向こうにいた絶望した瞳の少女は、今は救われたのだと、そう信じたかった。

母親は、どういう思いでいるのだろう。一生悔いて生きるだろう。娘を守れなかった己を責めるだろう。だがその悲しみが、彼女の弟を守るための大きな力となるはずだ。雪也の役目は終わったのだ。あとはもう、少女のために祈るだけだ。弟の幸福を。

(伊吹たち、元気かな)

警察に少女の手紙を郵送し、事件の結末をテレビで一緒に確認して以来、会っていない。
ほんのひとときではあったが、温かく血の通ったやりとりが懐かしい。