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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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窓のむこうは 続・神末家綺談7

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知らぬ間に流れていた涙をぬぐい、雪也は頷いた。心の中の大きなどす黒い塊が、静かに溶け出していくのがわかる。氷がとけていくように、ゆっくりと。

「・・・・・・ありがとう、」

冷静になった頭で、ようやく瑞にお礼を言う。ここで止めてくれなかったら、少女をもう一度悲しませるところだった。黒い塊は憎しみのまま、雪也の心に残ったに違いない。

「いーよ別に」

素っ気無く言い、エレベーターに向かう瑞。不思議なやつだな、と今更ながら思う。
素っ気無く、ときに厳しい瑞の言葉や考え方の中から、底なしの優しさを感じることがある。それはまるで祈りのように静かに、言葉のやりとりを通して流れ込んでくるのだった。


「・・・あのう、雪也くん?」

振り返ると、隣の部屋の主婦が、髪にカーラーを巻いたパジャマ姿でこちらを遠慮がちにのぞきこんでいる。しまった、と瞬時に後悔するがもう遅い。有名な噂好きなおばちゃんなのだ。

「・・・すみません・・・うるさくしちゃいましたか?」
「雪也くん、またご両親の留守に女の子連れ込んで・・・って、あらヤダッ、あんた男に乗り換えたの!」
「違いますよッ!!誤解ですッ!!」
「雪也・・・俺が一番って言った癖に、女連れ込んでるんですか・・・?」
「そうなのよう。しかも顔ぶれがいつも違うの。ヤダあなたかわいそう・・・!ちょっと雪也くん、あんた今に天罰下るわよ!」
「・・・やっぱり俺、遊ばれてたんだ・・・グスン」
「瑞!!面白がってノらなくていいから!!こ、こ、このことはどうか内密に・・・ッ!」
「い、いやだあ大丈夫よお!おばちゃん誰にも言わないから!ね!おやすみ、おやすみ!」

嬉しそうに笑い、おばちゃんは消えた。

「・・・サイッッッアク!明日はマンション中に広まってる・・・!」
「親の留守に女連れ込みまくってるおまえが悪いよ」
「ひとごとだと思って」
「だってヒトゴトだもーン。女は怖いぞお。せいぜい夜道に気をつけろよ」