小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

窓のむこうは 続・神末家綺談7

INDEX|23ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 


「おまえは告発の代理人に過ぎない。母親と男を裁くのは彼女の役目だ」

びん、と体中に響くような声だった。まるでその声自体に力があるかのような、人間離れした存在感。

「それをわかれ。さっきから少女が、おまえの腕を一生懸命に引っ張ってる。とめようとしている。おまえ、もう一度その子を苦しめるつもりなのか?母親と同じように?彼女にはもう、おまえしかいないのに?裏切るのか?」

その言葉に、体中から力が抜けた。膝が抜けて、雪也は廊下にへたり込む。金属バットが音をたてて転がる。

「おまえが許せないのは・・・自分自身なんだ。違うか?」
「っ・・・」

リノリウムの床に手をついて、雪也は声を詰まらせた。

「助けてやれたかもしれないのに・・・俺には、死んだ後に思いを叶えることしか・・・できないのか・・・」

夜のエレベーターで、少女と雪也は邂逅していた。伊吹に言われたけれど、雪也には思い出せない。あの夜に彼女の心はもう、あの最悪の結末に向けて動き出していたのに。どうして救ってやれなかったのだろう。どうして生かしてやれなかったのだろう。

「それはおまえのせいじゃない」

瑞の声は、先ほどの厳しさを消して、諭すような柔らかな口調へと変化していた。

「おまえは託された思いを見つけた。凍えそうな孤独な夜に、あの子の心をちゃんと温めた。それでいいんだ。少なくとも彼女は・・・それですごく満足してるぞ」

傍らに視線をやっても、雪也には少女を見ることはできない。

「・・・戻らない時間の出来事を嘆くのではなく、未来を変えるために雪也は選ばれたんだ」

差し出された手を握って立ち上がる。温度を感じさせない瑞の手のひらは、それでも確かに雪也を慰めるように優しい。

「警察にあの封筒を提出する。それでその子も、おまえも、ちゃんと救われる」