窓のむこうは 続・神末家綺談7
エレベーターが見えてくる。そこに瑞が立っていて、雪也は瞬時に彼がそこにいる理由を悟った。壁にもたれて、こちらをじっと見つめている。
「・・・帰ったんじゃなかったのか」
「伊吹だけネ。俺はここでおまえを待ってた。きっと来るだろうと思って」
「何か用か・・・」
「そっちこそ、そんな物騒なもの持ってどちらに?」
雪也の右手に握られている金属バットを言うのだろう。
「行かせない」
厳しい表情で立ちふさがる瑞を、雪也も睨み返す。
「どけよ・・・!」
今度こそ助けるんだ。今度こそ救うんだ。害虫のような大人から、少女が守りたかったものを助けるんだ。
「どかんよ。おまえ、それはただの逆恨みだろう」
「違う!俺は助けるんだ、今度こそあの子の願いを叶えるんだ!」
そのためにあの子は俺を選んだ。世界でたった一人、自分だけがあの子を救える。願いを叶えてやれる。
「――それはおまえの役目ではない。そんなことをする権利はない」
静かな口調なのに、氷水を浴びせられたような冷たさ。熱くなっていた頭が、熱が、瞬時に冷めていく感覚。
作品名:窓のむこうは 続・神末家綺談7 作家名:ひなた眞白