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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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窓のむこうは 続・神末家綺談7

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何時だろう。午前二時か。ずっとこうして座り込んでいる間、頭の中を色んな考えが流れては消えていった。キッチンに伊吹の作ってくれた夕食があったけど、もうすっかり冷めている。悪いことをしたな、と雪也はぼんやりと思う。

「・・・・・・」

机に乗っている封筒。その手紙に、もう一度目を通そうという気持ちにはとてもなれなかった。力を奪われて、気力を奪われて、いまの雪也に残っているのは、たった一つの感情だけだった。

「・・・なあ、つらかっただろ」

そばにいるであろう少女に問いかける。自分でも驚くくらいに、低く感情のない声だった。

「自分の未来と引き換えに、弟を守ろうとしたのか」

屑のような、男と母親のせいで。
小さな女の子の、未来が奪われてしまった。

「・・・悔しいだろ」

立ち上がる。地面が揺れている気がする。怒りのせいかもしれない。

「・・・今度は俺も一緒だ。行こう」

帰宅するときに見た。701号室に明かりが灯っているのを。帰っているのだ。

「・・・弟を、守りに行こうな」

静まり返った廊下に出る。ドアの閉まる音が夜に反響して静寂を切り裂く。激情は、堰きとめられて溢れ出すぎりぎりのところまで押し寄せている。それを自覚し、かつ制御している自分を、雪也は不思議に思う。