窓のむこうは 続・神末家綺談7
「あの子が死の真相を伝えたがっているんだとして・・・どうして、こんな方法で伝えようとしてるのかな」
「どういう意味だ?」
「だって・・・あの公園も、この地下鉄も・・・自宅からすごく離れてる。自分の机に遺書を残すとか、もっと手っ取り早い方法があったはずだよ。俺たち、すごく遠回りさせられてると思わない?」
伊吹の言葉はもっともだが、雪也は冷静に聴いている余裕などない。しかし瑞はひっかかるようだった。
「俺も同感。あの子、一度だけ俺に意識を向けたことがあったんだけど・・・真実を知ってほしいけど、でも知られてはいけないって、そういう態度だった。何度も電話をかけようとしたけど結局切ってたっていうのも、ひっかかる」
「うん・・・知られたくない。知られたらまずい。だけど雪也くんに伝えたい。家族でも友だちでもなく、限りなく他人に近い雪也くんに・・・。これって、本当にただの自殺なの?俺、ちょっと怖い。事実はもっと・・・残酷なカタチで雪也くんに突きつけられるかもしれない」
残酷なカタチ・・・。
「・・・俺は、どんな真相でも、この子が望んでるなら叶えたい。それだけ」
自分が傷つくことよりも、それ以上に傷ついて死んでいった少女のことを思うとつらかった。雪也の決意を感じ取ったのか、伊吹はそれ以上何も言わなかった。
「・・・あの子、また雪也くんのそばに戻った。道案内は終わりみたい」
地下鉄の券売機のそばに、古びたコインロッカーが並んでいる。一つだけ、鍵のついていないロッカーがある。間違いない。ここだ。
「開けるぞ」
躊躇なく開ける。中にはAサイズの茶封筒が入っていた。それだけ。
「何だろうな・・・」
封筒の中には、白い紙の束と、SDカードが入っていた。
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作品名:窓のむこうは 続・神末家綺談7 作家名:ひなた眞白