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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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窓のむこうは 続・神末家綺談7

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「雪也くんは覚えていないかもしれないけど、彼女にとってすごく嬉しいことだった。心があったかくなって、生きていてもいいよって言ってもらえたみたいで・・・」

胸が痛んだ。本当に些細な、誰とでも交わせるやりとりのはずなのに。少女にはそれが特別だったのだという。悲しくてやるせなかった。どれだけ冷たい世界を生きていたのだろう。この記憶を持ってあの夜に戻ることが出来れば、助けてやりたい。どんな手を使ってでも。

「だから、雪也くんを選んだんだと思うよ。ちゃんと、意味があった」

伊吹はじかに彼女の心に触れているから、感じている悲しさややるせなさは雪也以上なのだろう。静かな声は、遠い昔を偲ぶような切なさを含んでいる。

「・・・俺、恋愛とかはよくわかんないけど、彼女はそれに近い感情があったんだと思う・・・たぶん、だから」

声は途切れた。霧雨が悲しみを覆うように降り続く。冷たくなる手に力をこめ、雪也は決意を新たにする。少女の導く先に事実があるのだ。必ず救ってやる。絶対に。死してなお苦しむ少女に芽生えたのは、同情や憐憫とはまったく別の、怒りにも似た感情だった。悔しいと思う。生きているときに気づいてやることができればよかったのに。雪也を突き動かすのは、少女への思いとは別にある、そんな悔恨に似ている。



導かれた先は、市営地下鉄の終着駅だった。あの公園からずっと離れた場所にある。一時間近く走らされ、足はくたくただったが、ここに少女を救う鍵があるのだと思うと力が沸く。

「行こう。どうした伊吹」

地下鉄への階段を降りようかというところで、伊吹が青い顔をして立ち尽くす。

「なんか、怖くて・・・」

怖い、と瑞が聞き返した。