窓のむこうは 続・神末家綺談7
エレベーターに乗り込んだ雪也が、「開」ボタンを押して少女を待っていてくれる。
「何階?」
乗り込んだ少女を見下ろし、雪也が優しく尋ねた。夜中にパジャマ姿で出歩く少女を咎めるわけでも、不審そうに観るでもなく。その優しい声色に、少女の心が温かくなるのが、伊吹にははっきりとわかった。
「七階です」
少女の声が震えていた。雪也がボタンを押し、エレベーターが静かに昇り始める。
「俺ここなんだ」
五階でエレベーターが停まる。雪也は少女の目を見て笑いかけた。
「まだ寒いから、そんなカッコじゃ風邪ひくよ」
心からゆっくりと溶け出す温かさが、少女の身体を満たしていく。
「じゃあ、おやすみ」
扉が閉まるまでずっと、少女は遠ざかる雪也の背中を見つめていた。
(ああ、そうか・・・ここで、繋がったんだ・・・)
作品名:窓のむこうは 続・神末家綺談7 作家名:ひなた眞白