窓のむこうは 神末家綺談7
「大丈夫?」
「ああ、ありがとうね・・・ちょっと今日は血圧が高いみたいで・・・しんどくてね」
和服姿の、小さくて上品なおばあさんだった。痩せた細い肩を支えると、死んだ自分の祖母を思い出した。
「救急車、呼ぼっか?」
「いいの、いいの、じきによくなるから・・・」
「でもつらいんでしょ?家、どこ」
「ああ、申し訳ないねえ。家のものに迎えを頼むから、電話だけ、してもらえますか」
「ん」
スマホを取り出して、老婆の言う番号に電話をかける。
『はい、神末(こうずえ)です』
若い男が応対に出た。孫だろうか。
「すみません、俺、葛西(かさい)っていう者ですけど、ええと駅でそちらのおばあちゃんにお会いして、なんか具合悪いみたいで・・・」
『オレオレ詐欺ならぶっとばすぞ』
「ち、違いますよ!おばーちゃん、ハイ」
雪也はスマホを老人に渡した。使い方がわからないようだったので、耳元にそっとあててやる。
「瑞(みず)?ええ、そうなの。ごめんなさいね・・・平気だと思ったんだけどねえ・・・はい、はい・・・わかりました。じゃあお願いね」
老婆は穏やかな声で話し終え、雪也にスマホを返した。
作品名:窓のむこうは 神末家綺談7 作家名:ひなた眞白