窓のむこうは 神末家綺談7
「じゃーあの女子集団に聴いてみる」
「行ってらっしゃい」
「うまくやれよ」
ここは瑞の出番だろう、と満場一致で決定した。伊吹には六年生は畏怖の対象だし、雪也はうまく話せる気がしない。マンションのマダムらを信じ込ませた瑞ならば、うまく話を聞きだすだろう。雪也と伊吹は木の陰に隠れて様子を見守った。
「・・・いま、その・・・小金井さんはどうなの」
小学生と和気藹々と話している様子の瑞の背中を見つめたまま、雪也は伊吹に尋ねてみた。
「ん・・・そばにいるよ。昨日とおんなじ。特に感情に変化はないみたいだけど」
「・・・そっか」
少しでも、彼女の思いを知れる場所へ近づけているのだろうか。焦っているのが自分でもわかる。
「焦らないで、雪也くん」
見透かしたように、伊吹は優しく言った。
「必然だったと、俺は思うんだ。雪也くんが彼女と目を合わせてしまったのは、悪意じみた偶然でも、怪談じみた不幸でもないんじゃないのかなって。ちゃんと理由があって、雪也くんは彼女に選ばれたんだよ。だから絶対、助けてあげられるはずだよ」
理由。どんな理由があるんだろう。少女を救うことができれば、それがわかるのだろうか。
作品名:窓のむこうは 神末家綺談7 作家名:ひなた眞白