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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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窓のむこうは 神末家綺談7

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別れ逝く必然



雨で煙る校庭をじっと見つめながら、耳をすりぬけていく教師の声を聞く。
今朝、瑞とマンションの聞き込みを行った後で、雪也は登校していた。授業料をどぶに捨てるなよと瑞に言われ、放課後まではすることもないからと説得されたのだった。

(当たり前の光景なのに・・・)

頬杖をついていた雪也は、教室の静かな空気の中、ぼんやりと考える。

(こうして生きてるって、特別なんだな・・・)

死んだ少女も経験できたであろう高校生活。友達と笑って、退屈な授業を聞いて、恋をして。そんな至極当然のことが、少女にはない。永遠に失われてしまった。
この教室にいる何人が、この時間が特別であることに気づいているだろうか。雪也は無意識に、死にたい、と追い込まれ、命を絶った人間の心に、自分の思いを重ねている。

放課後のチャイムが鳴った。冬服に変わった制服の間をすり抜け、雪也は教室を出た。駐輪所から自転車を引っ張り出すと、瑞と伊吹との待ち合わせ場所に向かう。秋空はすでに暮れかけていた。

駅前の繁華街には、制服姿の高校生や、帰宅の途につきはじめたサラリーマンたちが行き来している。適当な場所に自転車をとめた雪也は、大型コーヒーチェーン店の奥まった席で二人を見つけた。

「あ、雪也くん」
「オツカレー」

伊吹と瑞の姿を見て、ほっとした自分がいることに気づく。肩の荷が下りるような、胸のつかえが降りるような安堵。学校にいる間自分を包んでいた緊張感や、どうしようもないやるせなさを、世界中でこの二人だけが知ってくれているのだという安心感で、膝がくずおれそうになる。