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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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窓のむこうは 神末家綺談7

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小雨の降る中をマンションへと向かう。午前九時、制服姿でうろつくにはまだ安全な時間帯だ。とはいえ行動しにくい。一度着替えに戻ることにした。

「その子は701号室に住んでたんだ。俺んちが、505。ときどきエレベーター乗るとき一緒になったくらいで、殆ど会話もしたことない。挨拶くらいかな」
「家族は?」
「・・・家族構成までは知らない」

何号室にどんな家族が住んでいるのか、知らない。それは現代の地域コミュニティの低下を示す典型的な例だろう。祖母の田舎では、近所に誰が住んでいて親がどんな仕事をしているかまで把握していた。地域のみんなで互いを見守りあうという体制があったのだろう。だがいまは、干渉してほしくないという人間も増えていると聞くから、もっと濃密な付き合いが住人同士になれば、少女は死なずにすんだかもしれないと雪也は思うのだ。無関心な自分にも責任の一端があるような感覚。

「家族はさぞ無念だろう・・・家族に聞くなんてことはできない。その子のこと、何でもいいから知りたいな。学校をあたるにしても・・・俺ら二人じゃ怪しすぎるなァ」

瑞はそう言って口を尖らせる。さすがに学校まで行くのは・・・と雪也も同意見だ。
マンションが見えてきた。エレベーターホール付近に、主婦が数人集まって話し込んでいるのが見えた。噂好きのグループだ。さすがに顔を合わせば、あら学校行ってないのかしらとあらぬ噂をたてられることは必至だ。

「あれいいな、ちょっと探りを入れてくる」
「瑞待て、あれはまずい!おばちゃん軍団は怖いぞ!」
「まあ見てろ。伊達に長生きしてないから」

そう言うと口笛を吹きながら言ってしまう。ばか、と内心で毒づきながら、雪也は自動ドアの影に隠れて見守るしかない。

「あの、ちょっといいですか」

瑞が声をかけると、三人の主婦が好奇の視線を彼に向けた。あらイケメン、でもどこの子かしら、もしかしてどこかのおうちの愛人さん?視線から読み取れる好奇心などどこ吹く風、瑞は淡々と話し始める。