窓のむこうは 神末家綺談7
きみが呼ぶ
公園だろうか。朝もやか、霧か、ぼんやりとした白い世界に、砂場とブランコが見える。生い茂った緑の向こうには、錆びた鉄棒。
寂しい公園だな、と雪也は思う。子どもがいない、寂れた公園。忘れ去られた時代の公園。
生き物の気配がしない。鳥も鳴いていない。
ジリリリ、ジリリリ、ジリリリ・・・
耳障りな音が静寂を切り裂く。砂場の脇にひっそりと佇む公衆電話が鳴っている。白い霧に霞むそこへ、雪也は進む。扉を開くと、古めかしい緑色の電話が鳴り続けていた。どこか、違う世界からのメッセージ。そんなイメージが浮かぶ。
とっていいものか、逡巡する。
電話は鳴り続け、雪也は立ち尽くす。どうしていいのかわからない・・・。
作品名:窓のむこうは 神末家綺談7 作家名:ひなた眞白