ねがいがかなうまで
紫暮も知ったのだろう。そして、どうしてよいかわからないのだ。己の感情をコントロールできず、伊吹を慰める言葉も見つからないのだと瑞は思う。
そうして電車に揺られ、須丸の屋敷に着いたのだった。
「お役目様、お呼び立てしてしまい、申し訳ございません」
玄関先で、紫暮が深々と頭を下げる。
「詫びるのはこちらの方だ。すべてをきみに任せてしまい、すまなかった」
「そんな・・・」
「伊吹はどうしているね。まだ落ちこんでいるかい」
「それが・・・今朝目が覚めてからは・・・」
紫暮の返事も聞かずに、瑞は靴を脱ぎ散らかして玄関に上がる。
「おいぼれた政治家かおまえらは。何を悠長に話している」
こちらは伊吹の悲痛な叫びを聞いていたのだ。すぐにでも顔を見て、安心したかった。
「きゃあ!」
すっぱーんと音をたてて奥の間の襖を開くと、絢世と伊吹が向かい合って昼ごはんを食べているところだった。
「びっくりするじゃないですかあ!」
「おー瑞、久しぶり」
驚く絢世とは対照的に、伊吹は拍子抜けするくらい間抜けな笑顔で瑞を迎えた。