小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ねがいがかなうまで

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 
何度も名前を呼ばれた。眠りの必要のない瑞は、夜がきてもじっと縁側に座り、目を閉じているだけのことが多い。秋めいてきた夜の涼しい風が山をゆっくりと走っていく。それを耳で感じながら、ただじっと朝を待っていたとき。

何度も、名前を呼ばれたのだ。

あれは伊吹だった。瑞、と切羽詰った涙声が、風にまじって届くのだ。

ごめん、と繰り返していた。何度も。

どうした、大丈夫か、と声をかけてやったところで、そばにいない伊吹には届かないのだが。それでも夜毎続くのはさすがに堪えた。伊吹が京都へ向かった四日目の朝、瑞は重い腰をあげた。

「伊吹を迎えに行く」

朝一番に、穂積にそう告げた。

「待てぬのか」
「待てぬ。泣いている」

おそらく知ったのだろう。瑞と、己自身の血の関係を。泣いて苦しんでいるのだと知れば、ますます気が逸った。

「同じだなあ、わたしもだ」

そう言って笑う穂積は、早朝だというのに身支度を整えている。

「今すぐにでも京都に飛んでいこうと思っていたところだ。昨夜、紫暮くんから電話をもらってね。どうしていいかわからぬから、来てくれんかというのだ。あの青年が珍しく、泣きそうな声で」

作品名:ねがいがかなうまで 作家名:ひなた眞白