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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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「・・・瑞、」

咆哮はやんだが、涙は雨のように降る。言葉をなくしても人間だった頃の感情が残っているのだろうか。それでも徐々に呼吸は浅くなっていく。最期のときが近いかのように。
ぐったりとした身体を支えるようにしながら、伊吹は頭を抱いてやった。グ、と苦しそうに喉が鳴り、口から黒い血が零れた。

抱いていてやることしかできない。何もできない。無力感に苛まれながら、少しずつ獣の命が消えていくのを感じていることしかできない。

りん。

音が聞こえた。鈴が鳴るようなかすかな音。

「・・・誰、」

ひとの気配。振り返ると、木立のそばに、目にも鮮やかな緋色の袴が見えた。長い黒髪が美しい。金の冠、緑の榊。悲しみに暮れた表情は、どこかで・・・。

(絢世さん・・・?)

ああ、絢世だ。絢世によく似ている。そうか彼女の血は、須丸へと受け継がれていったのか・・・。

「兄様・・・」

みずはめが近づいてくる。

(俺に気づいていない・・・?)