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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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夢。これも夢か。夢を見ている。伊吹は森に立っている。
力が入らない、でも行かなくちゃと思う。森の奥で、瑞が待っているから。

涙が溢れてとまらない。足が震える。満月の光が降り注ぎ、森の奥を照らしている。

(どうして・・・)

地下書庫で知った事実は、瑞の予言どおり伊吹を打ちのめした。

神末一族は、ヒトガミであった瑞を食らい生き延びたことで、人ならざる力を手にした一族であったこと。

歴代のお役目が婚姻しているのは、同じく神に祭り上げられた彼の妹であること。

(瑞が初代のお役目だった・・・俺の中にも、瑞の血肉が流れている・・・)

罪深さに眩暈がした。彼を食らい生き延び、力を得た自分たちが、その彼を使役して護法神として守らせてきたなんて。

(あいつはどういう思いで・・・)

どういう思いで、長い時代を流れてきたのだろう。愛する妹に封じられ、憎むべき末裔に仕え続け・・・。

(瑞、)

生きたかっただろう。生きて妹とともに在りたかったのだろう。それらを奪ったのは伊吹ら一族だ。時代を流れた今も、兄と妹は絶対的な境界を引かれて触れ合うことも許されないのだ。