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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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この後起こったことを、わたしなりに史料をもとに推測してみる。

少年の無残な遺体は、池に投げ込まれたという。
当主の思惑通り神の怒りを買い、都は水害になるはずだった。

しかし、そうはならなかった。
水害よりもおそろしいものが、人間たちを襲った。

少年は神に捧げられた供物。人神であった。
その血に宿る力が、怒りと憎しみを糧として、強大な獣となって転生したのだ。

池の竜神は食われた。神を食ったのは、黒黒とした巨大な獣だったという。既存の生き物などいずれも当てはまらぬ、おぞましき姿だった。

内裏にいた少年の父親が、吐き出す炎に生きたまま焼かれて死んだ。
官吏も、民衆も、男女も子どもも関係なしに、獣は殺戮を続けた。

都は火の海となった。

少年の妹が、自らの命と引き換えに、獣を封じた。櫛を依り代にして。


獣は、一番愛した者の手で調伏された。
巫女は死んだ。