月に吼えるもの 神末家綺談6
「生きたいのです、父上・・・」
櫛を握りしめる。こんなところで朽ち果てたくない。こんなところで・・・。
「っ・・・・・・!!」
腕に、灼熱の痛みを感じる。矢が突き刺さっている。血が流れ出る。少年は膝をついて震えた。
痛い。
殺される。
このままでは、死ぬ。
このままでは、しぬ!
「いや、だ・・・!」
慟哭する少年の手足を、容赦なく矢が貫いた。
「死にたく・・・ない・・・!」
みずはめ。会いたい。おまえと生きたい。
今度こそ、幸福が。今度こそ、今度こそ。
行く先には、ようやく、幸福が・・・。
「いやだ・・・!!」
背中から、一気に貫かれ、少年は倒れた。身体が動かない。涙が後から後から零れていく、その感覚だけが、かろうじて生きていることを伝える。
作品名:月に吼えるもの 神末家綺談6 作家名:ひなた眞白