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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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「・・・父上、様?」

姿を現したのは父だった。武装した射士を複数伴っている。

「なんの・・・おつもりですか・・・ここは鎮守の森、ましてや今は儀式の最中・・・」

少年の言葉など聞こえていないかのように、父は片手を挙げて射士らに合図を送る。彼らがさっと動き、祭壇の周りを囲んだ。

「なにを・・・」
「雨が降らぬからな。祈りではない方法で、雨を降らすのだ」

何を言っている?少年の頭は突然の出来事に、止まっていた思考を慌てて回し始める。
雨は降らない?父は、帝の所業を知っているのだ。

「祈りではない・・・方法・・・?」
「水神の怒りを買うのだよ。さすれば大雨が降るであろ」

何を馬鹿なことを、と少年は力を振り絞って立ち上がった。

「そなたらが、土足で神域に入り込み、命を奪う武器を手にここに立っていることが、すでに冒涜であろう」

少年は訴える。ここは水神の住まう森、池。神聖な儀式の場で、父は一体何を言い出すのか。

「!」

どん、と腹に響く大きな音が聞こえた。太鼓の音だ。森の外からどんどんどん、と乱暴に響いてくる。

「雷鳴を模し、雨を降らせるというのか・・・」
「その通り。この音を聴けば、沈黙している水神も目を覚まそうぞ」
「およしください・・・このような・・・」

このようなやり方は、巫女を育てる一族が一番してはならぬ方法である。神の怒りに触れるなど、なんと恐れ多いことを。