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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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淡い光が降ってくる。満月だった。随分大きい。かすれて殆ど見えない目で、少年は夜空を見上げていた。
雨はもう降らないのだ。それがわかった。

この旱魃は天からの罰である。あめふらしが雨を乞うたところで、祈りが聞き届けられるはずもない。

(・・・それでもわたしは絶望していない)

従者が次々と死に絶えていっても。
己の手足が乾き、飢えによりもう身体中が痛みさえ知覚できなくなっても。

(必ず生きて、みずはめのもとへ帰る・・・)

その願いだけが、少年を生かし、この場に座らせ続けていた。

(生まれて初めて、自分のために祈る)

どうか雨を。後慈悲を。生きてここを出て、もう一度妹に会うために。
手のひらの上の飾り櫛が、生きよと訴えてくる。おまえの生は、おまえのものだと。

(みずはめ・・・)

妹の、優しい声をまだ思い出せる。
妹の、美しい瞳も覚えている。

まだ死ねない。必ず生きて――


「・・・?」


ぼうっと半ば昏睡状態の耳が、声を拾う。森の入り口から近づいてくる、冒涜的な足音。複数・・・。