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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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「わたくしの祈りは届きません・・・このままでは――」

続く言葉を飲み込んだのは、口にするのも恐ろしかったからだろうか。震える白い手を、少年は殆どない力で握る。

「安心おし・・・」
「兄様」
「わたしが必ず雨を降らせるから・・・」

だから、そんなふうに心を痛めなくてもよい。そう言いたかったのだが、みずはめは激しくかぶりを振るのだった。

「兄様はわかっておられない。わたくしは、雨など降らずともよいのです」
「みずはめ・・・」
「巫女としての地位も名誉も、豪奢な生活も必要ない。あなた様を失うことだけが怖いのです」

顔を上げたみずはめの目に、強い光が宿っているのを少年は見た。

「生きて、下さいまし」

みずはめは、かみ締めるように言った。

「どうか生きていて、兄様。生きて都を出られたら、家もお役目もすべてを捨てて、二人で・・・」

二人で逃げましょう。

みずはめは言った。そして懐から取り出したものを、少年の手に握らせた。