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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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内裏の庭から、白く眩しい空を仰ぎ、当主は焦っていた。

「なぜ、雨が降らぬ・・・」

みずはめも、あれの兄も、これまで通りに雨乞いを行っているというのに。焦りが苛立ちに変わるのを感じながら、思案する。

(おかしいではないか。このまま雨が降らなければ・・・)

勅命を遂行できず、権威は地に落ちる。そんなことは考えたくもなかった。ここで雨を降らせることが出来れば、朝廷での権威ある重役にのし上がることも可能だろう。

それなのに。

「大殿様」

振り返れば、神妙な顔つきをした初老の男が立っている。当主である男の右腕のような存在であった。

「みずはめの様子はどうか」
「お休みになられています。こうも連日続くと、疲労が濃いご様子」
「そうか・・・」

一日でも早く雨を降らせなければ。森においてきたみずはめの兄も、他者よりも丈夫とは言え、死にいたることも考えられる。失敗だけは避けたい。絶対に。

「実は、内裏で気になることを聞きました」
「なんだ」
「雨が降らないのは、帝と都が、神々の怒りをかっておるからだと・・・」

天の怒りだと?

「政敵を排すため、都を移すため、帝は幾多の命を犠牲にしてこられたと。幾多の血の上に繁栄する都は、天から罰せられておるのではないか。そんな話を聞きまする」

だから、雨が降らないというのか。天は、帝の所業をこのような形で罰していると。

「それが事実であれば祈りは届かない・・・」

このままでは、雨は降らない。どうせよというのだ。出世の機会が潰れてしまう。

「・・・雨を降らすには、祈りの他にも方法がありまする」
「何だと?」