月に吼えるもの 神末家綺談6
男は声をひそめ、当主に囁く。
「水神の怒りを買うのです」
「怒り?」
「あの池に住まう高位の水神が怒れば、大嵐がやってくるでしょう
水神ならば、水害をもたらす。なるほどそれならば雨は降るだろう。
「しかし、どうやって・・・」
「穢すのです」
穢す・・・。
「美しい水に住まう神の、その棲家を穢すのでございます。血の穢れ、死の穢れでもって」
罪深いことを、とは感じなかった。それはいい。それならば、適した役目のものがおるではないか。当主は、欲にくらんだ瞳をぎらりと光らせる。
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作品名:月に吼えるもの 神末家綺談6 作家名:ひなた眞白