帰れない森 神末家綺談5
「伊吹を傷つけてでも、おまえは願いを叶えたいのだろう?」
「意地悪だろ・・・そんな言い方・・・」
「意地も悪くなるというものだ。わたしにだって覚悟がないわけではない」
そうだ。穂積だって、相当の覚悟を持っているはずだった。瑞の願いが叶えば、穂積も様々なものを失うことになるのだから。
「・・・少し意地悪だったかな。そうしょげけるな」
「少しだ?かなり、の間違いだろう」
「願いは絶対に叶えてやる。それがわたしの・・・神末の長男に課せられた贖罪だからな」
伊吹の背中はもう見えなくなっていた。このままどこか遠いところへ行って帰って来ない・・・そんな不安が頭をもたげた。
終わりの始まり。
別れはすぐそこまで迫っている。
作品名:帰れない森 神末家綺談5 作家名:ひなた眞白