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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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思えば、夏をさかいに伊吹との関係は劇的に変わったと思う。血が通った関係とでもいうのか、うわべだけでなく、その内面での結びつきがつよくなった。悪く言えば、血の通った関係だからこそ、傷ついたときのダメージも大きくなった。結びつきが強ければ強いほど、その結びつきが断絶されることが恐ろしいのだ。だけど。

「・・・おまえは深く傷つき、生きていることを悔やむだろう。俺と出会って情を移したことを悔やむだろう。だがそれでも、忘れるな」

瑞は続ける。

「笑っていると約束したこと、忘れるな。俺も覚悟はできてる。行ってこい」
「うん、じゃあね」

行ってしまった。背中が遠ざかる。未練がましく見送る自分に嫌気がさす。覚悟を決めたなんて言っておきながら、変わってしまうことを恐れているのは伊吹よりもこの自分だなんて。

「追いかけてもいいんだぞ、瑞」
「・・・行かせていいのか」
「おまえは願いを叶えてほしいとわたしに言った。ならば伊吹が事実を知ることは必須なんだよ」

隣り合って穂積が言う。

「いまさら、伊吹の心情を省みるのか?情を移して恋しくなったか。己の運命も、悲願も忘れて?」

穂積のまっすぐな視線に、言葉を返せなくなる。穂積らしからぬ厳しい物言いだった。珍しい。