帰れない森 神末家綺談5
(俺、寝てるっ・・・!これって、リアルタイムなのか!?瑞が、いまここに!?)
瑞は、眠る伊吹のズボンのポケットに、そっと鍵を入れた。
(瑞だ!起きろ、起きろ俺!!)
しかし目の前の自分は、穏やかな寝息をたてて眠っている。起きる気配などなく、我ながら情けなくなる。
瑞はそっと伊吹の髪を撫でると、立ち上がって踵を返す。帰ってしまう!
早く目を覚ませ!視界がぼんやり暗くなっていく。
「~~~~~~っ、瑞ッ!」
飛び起きた。畳から転げるように降りると、伊吹は駆け出す。入り口へと、瑞を追って駆け出す。
「瑞!!」
梯子を上って地上に出る。地上の書庫を入りぬけ、蔵の入り口に飛び出す。
「・・・どうしたの?」
息を切らせて飛び出してきた伊吹を見て、作業着姿で草むしりをしていた紫暮が目を丸くして驚いている。
作品名:帰れない森 神末家綺談5 作家名:ひなた眞白