小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

帰れない森 神末家綺談5

INDEX|24ページ/40ページ|

次のページ前のページ
 


「わたしは決めていたよ。一族の歴史と、おまえの出自を知ったときからずっと、おまえの願いを叶えようと」

悟ったのだ。自分はそのために、瑞の願いを叶えるために生まれてきたのだと。

不自由な宿命を負って生まれたのも。
戦争で命を散らさず生きてきたのも。

すべてはそのため。このときのため。

「わたしはそれに気づけたことで、人生に意味を見出せたんだよ、瑞」

救われていたのは、穂積のほうだったのだ。

「伊吹がすべてを知ったとき・・・きっとあの子もわたしと同じことを思うだろう」

穂積は確信している。子どもだ。まだ幼い。それでも、あの子は。

「別れよりもつらい未来が待っている。それを回避するために、このまま平穏にお役目として瑞と生きていく選択肢もある。それでもあの子は、瑞の願いを叶えてやれと、わたしに言う。きっとだ」

瑞の瞳が、まっすぐに穂積の目を射抜く。

「・・・なぜだ、穂積。つらいなら逃げてもいい。俺のために、苦しむ必要なんてない。一族の歴史が覆る。おまえたちが代々積み上げてきたもの、そのすべてが失われる。俺の願いはが叶えば、間違いなくそうなる。それでもおまえは、伊吹は、俺の願いを叶えようというのか。なぜだ」
「簡単だ。おまえのことが大好きで、大切だからだ」

瑞のためなら、傷ついたって構わない。そう、思っているからだ。