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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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もどかしくて、たまらない。

「紫暮さん、俺・・・」
「大丈夫かい」
「こんなに・・・苦しい。なのに、やめられない。いまの幸せよりも、いつかくる別れの待つ未来を選んでしまう」

宿命めいたものを感じずにいられない。感情ではなく、血が、魂が伊吹にその選択を強いるのだ。これは、自分の役目だ。

だから、俯いてなんていられないのだ。

「・・・大丈夫ですよ」
「うん?」
「じいちゃんが、いるから。瑞の異変にいち早く気づけるのは、じいちゃんだと思うし、大丈夫だと思います」

だから帰りません、と続ける。瑞のそばには穂積がいる。一番の理解者であり、親友が。

「俺なんかよりよほど、瑞のことを理解しているはずだから」

縁側から欠けた三日月が見える。遠い空の下にいる瑞を思う。
挫けるな、と伊吹は念じた。
挫けるな、怖がるな。見えない不安や意地悪な運命、そんなものに負けてたまるか。






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