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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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だけど。

「瑞のほうが変化して、夢にまで影響してきてるのだとしたら・・・」

紫暮が呟くように言うのを、伊吹は聞き逃さなかった。

「・・・なんですか、」
「いや、様子がおかしいだろあいつ。少し心配になって。きみが言ったように不安定だ」

帰ったほうがいいだろうか、と伊吹の中に一瞬だけそんな思いが過ぎる。受話器の向こうで力なく笑った瑞の声が、耳から離れない。

会いたいなんて、そんなこと絶対言うようなやつじゃない。
いつだって傲岸不遜で、弱みなんて見せない。隙なんて作らない。

「瑞・・・」

夢のなかで死んでいた瑞の姿が蘇る。
自分はいつか、あんなふうに瑞を失うことになるのだろうか。
それでも笑っていられるのだろうか。

こんなに胸が苦しい。そうまでして過去を暴くのか?何も知らないまま、二人で毎日笑う日々のほうが、本当は大切なのではないのか。
会ってあの冷たい手に触れれば、こんな不安はきっと吹き飛ぶ。いつかの夜、瑞がしてくれたように、抱きしめてやれば、彼の不安は消えるだろうか。いますぐにでも、そうしてやりたい。