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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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「夕方にもね、瑞が電話をかけてきたんだよ。俺に」

畳みに積まれた本の山を押しのけて、紫暮が伊吹の前に座る。

「・・・そうなんですか?」
「うん。きみに会いたいって」

その言葉を聞いて、伊吹は考え込んでしまう。

「・・・なんだろう、俺もだけど、瑞はすごく不安定になってる。普段なら、絶対にそんなこと言わない。俺が、不安にさせているんだと思う。俺が事実を知ったら、この関係も生活も、すべてが破綻してしまうって、瑞は考えているから」
「それもあるだろう。だけど、それだけじゃない、たぶん」
「え?」

麦茶のグラスを本の山に置いて、紫暮が頬杖をついた。考え込む表情だ。

「昼間話したろう。変化の兆し、って」
「はい。夢のことですよね」
「瑞の感情が引き金になっている気がする。きみが事実を知る覚悟を決めたからじゃなくて、瑞に変化があったから、夢が動き出した気がする」

瑞の変化。それは伊吹との関係の変化と同義だ。

「きみに夢を見せているのは瑞なんじゃないかな。きっと無意識ではあるけど」

変化を恐れる一方で、瑞は渇望しているのかもしれない。
知ってくれ、と。
夢の内容から推察すれば、隠された事実は悲しく酷だと思う。瑞はそれを、自分に知ってもらいたいのだ。
もうやめるか、と瑞は言った。あの優しさは抗いがたい魅力を持っているが、流されてはいけない。