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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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安堵が体中を満たし、伊吹はその場に崩れ落ちた。あの夢を見た後で瑞の声を聞けたのは、ありがたかった。

『おまえと話さなきゃいけない気がして・・・なんでだろうな、こんな夜中に・・・』

自嘲気味に笑う気配が伝わってくる。おかしくて笑ってしまう。安堵と、不思議なリンク。伊吹は座り直し、受話器を持ち直す。

「・・・夢、見てたんだ」
『夢?』

夢。そうだ。死んでいる瑞を、見た。

「怖い、夢・・・」
『伊吹?』

涙が溢れてきて、必死で声を殺す。

『どうした?・・・泣いてるのか?』
「っ、泣いてないよ、大丈夫・・・」

取り繕って笑う。笑っていないと、不安が堰を切ってあふれ出て、叫びだしてしまいそうなのだ。それでも、涙が溢れてとまらない。安堵と不安が入り混じる。受話器を握り締めたまま、伊吹は声を噛み殺して泣いた。

『・・・もうやめるか?こんなこと』

少し落ち着いたところで、瑞が呟くように言うのが聞こえた。
やめる?真実を知ることを?

『つらいならいいンじゃないの。もう、帰ってくれば』

らしくない気遣いが嬉しくて、思わず笑ってしまう伊吹だ。

「やだよ、やめないよ絶対。まだ帰らないし」
『そうか。そうだな』

寂しそうに笑う気配が伝わる。

『夜中に悪かった。ゆっくり休めよ』

ああ、途切れてしまう。