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海野ごはん
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novelistID. 29750
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ラブ・アゲイン

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「すいませ~ん。誰かいらっしゃいませんか~」街の中の神社はそこだけ切り取られたように静かだった。すいませ~ん・・・康夫の声が響き渡る。
社中の下働きだろうか若い男性が出てきた。
「あの~、この神社ってわかりますか?」無理を承知で康夫は聞いてみた。
「さぁ~」あっけない返事にかすかな期待も萎んでゆく。
「待ってください詳しい人に聞いてみますから。ちょっと携帯いいですか」と聞いて若い男は事務所の中に入って行った。数分後だろうか、随分長く感じた康夫は恰幅のいい袴を履いた神主が若い男に連れられて来るのを見た。
「すいません。ちょっとそこがどこの神社か知りたくて」康夫は申し訳なさそうに聞いた。
「なんで行くんのや?」年配の神主の質問に康夫は
「えっ・・・ちょっと昔の彼女がそこで待ってまして・・」と言った。
「いや、いやタクシーかバスか車かと聞いとりますんや」
赤面した康夫は「あっタクシーのつもりですが」と頭を掻いて笑った。
どうやら隣町でタクシーなら30分ぐらいかかるそうだ。わかっただけでもありがたい。神社の住所を聞き礼を言い、康夫はすぐ表通りに出てタクシーを拾った。
午前11時なら、後1時間はある。間に合うと思い敏恵にメールをした。

「そこは氷川神社だろ。11:00AMに行くから」

返信が帰って来ないので康夫はタクシーの中でそこでいいのかずっと不安だった。しかし敏恵のやつ、変な冒険をさせるものだ・・・そんな彼女だからこそ気に入っていたのかも知れないと康夫は思った。またくらげが海面に浮上して来た。

幹線道路から外れて、少し海が見える海岸線をタクシーは走っていた。康夫にとっては訪れたことがない場所だった。敏恵はここあたりに住んでいるんだろうか?
以前付き合っていた時は、違う町だった。こんな場所に二人で訪れた事はなかった。康夫は3年ぶりに会う敏恵を想い、自分の3年間と照らし合わせてみた。
敏恵と別れて、今まで付き合った女性は3人いた。ほぼ1年に一人の割合だ。
敏恵は彼氏がいると言っていた。自分と別れて何をしてたんだろうと思った。
よく考えれば、別れて以来、さほど大して真剣に彼女の事は考えてなかった。反対に冷たく忘れていた。今更、会ってどうしようというのだ・・・。
久しぶりのメルアドに気がつき、裸を思い出し、いやらしい下心を出してメールを打ち、もしも会えたらと期待を膨らませ返事をし、ついつい昔の恋心に火をつけてしまった。そしていたずらのような敏恵のメールに心躍らせ、今、向かっているわけだが俺は馬鹿なんじゃないだろうか・・と康夫は考えた。
彼氏いるじゃん・・・、3年ぶりで何を話すつもりなんだよ・・・、いい女だったけど過去の女じゃん・・・、このまま会って、久しぶり~、バイバイかもしれないし、ただの挨拶だけなんて無駄なんじゃないのか・・・康夫は不安と敏恵の少しの温かな優しさを期待してここまで動いてる、自分の計画のなさに笑った。

タクシーは携帯の中にある写真と同じ場所で停まった。立派な松の木が門前を飾り、歴史を感じさせる門構えが日本の風景ですという感じで威厳を放っていた。
時計は11時前20分だった。約束の時間にはまだ随分あった。
作品名:ラブ・アゲイン 作家名:海野ごはん