ラブ・アゲイン
康夫は9時に会社に出社すると、電車の中で受け取っていたメール通知に気がついた。敏恵からだった。
「おはよっ 仕事してる?いい天気だし休まない?デートしようか」
康夫は敏恵のメールを見ると笑ってしまった。あいつは俺が会社をサボって女と会うのを重要視する奴なんだとわかってやがる・・・。康夫は体調が悪いのを理由にそのまま会社から早退した。昔も何度もやったことだ。
コンクリートの箱の中から出てくると、首のネクタイを緩めた。そして敏恵にメールを打った。
「敏恵の希望通り 会社を飛び出てきた。さて どこに行けばいい?」
それから康夫の携帯は3分後に震えて鳴った。
「ここ」 短いメールだった。
そしてどこかの神社の門前の写真が一枚、貼り付けてあった。
「どこ? わかんない」
「探して来て?楽しいでしょ 11時に会いましょう」
「えっ ほんとにわかんないんだけど」
それっきり康夫の電話に連絡は来なかった。人通りの路上で途方にくれる康夫は頭を絞った。これって、だいたいこの町なのか?それさえわからない。送られてきた写真を拡大しながら手がかりになるものを見つけ出そうとしたが、神社の名前さえわからない。時計は9時半だ。だいたい11時と言うのも午後なのか午前なのか?
もし午前11時だったら、あと1時間半しか時間がない。
康夫は客待ちのタクシーを見つけて聞いてみることにした。
「これだけじゃ、わかんね~よ」どの運転手も笑って、他人事のような顔をしていた。
「あそこで聞いて見たら、同業だから」と指差してくれた方に、写真とは違う神社が見えた。康夫はかすかな頼りをあてに神社の境内に入って行った。