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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 続・神末家綺談4

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通う心と



特別だからな、と瑞が言った。真っ暗な校舎、図書室の前。当然だが電気はついておらず、伸びる廊下の向こうは漆黒だ。非常灯の光にぼんやりと照らし出された瑞と伊吹の表情を見て、朋尋は頷き返す。

「わかってる・・・」
「ほんとはこんなことしちゃいけないンだけど・・・」

死者と相対することをいけないと言うのだろう。瑞がどうやって彼女に接触し、この図書室に留めておいてくれたのかなんて、朋尋にはわからない。だけど、案じてくれているのは十分に伝わったし、伊吹の説得を聞いた後でも、彼女と話す場を設けてくれたことには感謝している。

「俺たちはここで待ってる。伊吹に言われたことを忘れるな」
「はい」
「戻ってこいよ」
「わかってます」

冷たい扉に手をかける。

「朋尋、」

親友の声に振り返る。言葉はなかったが、その優しく笑う表情が言葉よりも明確に伝えてくる意思を、朋尋は感じた。信じているよ、と。頷き返し、図書室に踏み入った。

しん、と沈黙が落ちた図書室を抜け、奥の書庫の扉を開ける。かびくさい匂いと、ひんやりとした夜気がすうっと身体を覆う。立ち並ぶ書架の合間を縫うように机に向かう。

(消えている・・・)

メッセージがすべて。やはりあのやりとりは、許されないことだったのか。机にそっと触れた朋尋の耳に、何か小さな音が聞こえた。鈴を転がすような、誰かが囁く声のような。