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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 続・神末家綺談4

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朋尋の顔が、一瞬呆気に取られたかのようにかたまる。それは目覚めの兆しだった。

「それは救いじゃない。彼女をもう一度、悲しませるだけだ。気づいて、朋尋」

沈黙の間を、ぬるい風が吹きぬけた。かさかさと線路脇の草が鳴く。

「朋尋が死んだら、朋尋と同じことをするよ。俺も、朋尋の家族も」

言っていて、つらくなる。朋尋が死んだらなんて、仮想の話でもつらかった。

「追いかけたいって思うよ。どうして止められなかったんだろうって自分を責めるよ。おじさんも、おばさんも、おじいも、芽衣(めい)ちゃんも」

家族を思い出したのか、朋尋の瞳にはっきりとした動揺が浮かぶ。

「俺も、俺だってそうだよ朋尋。自分を責めて、一生苦しみ続けると思う・・・」

いまここで彼を、彼女のもとへ行かせたら。

「朋尋は、どう?いま俺が死んだら、いなくなったら。想像してみてよ。ひとの命って、こんな簡単に自由にしていいものじゃないでしょう?」
「・・・・・・」

朋尋の瞳に光が戻る。戸惑うような、迷子の幼児みたいな不安そうな瞳が揺れていた。
伊吹は親友に歩み寄る。

「この感触が、彼女にあるか?」

きつく、手を握る。渾身の力を込めて。熱い手だった。朋尋が、首を振る。

「この痛みが、彼女にあるか?」

爪が食い込んでいくのもかまわずに、伊吹は力を込め続ける。朋尋の表情が痛みに歪んだ。

「・・・これが、生きているということだよ、」

それは絶対的に、こちらとあちらを分断する境界である。誰も侵せない、超えられない摂理なのだ。死者を求めてはならない。死者を望んではならない。悲しみが増すだけだから。