小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

花は流れて 続・神末家綺談4

INDEX|18ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 


伊吹は、味方なのだ。自分の存在を惜しみ、尊んでくれる。そんな人間がこんな近くにいてくれることが、こんなにも心強い。失望など、するものか。
世界中の誰が敵に回ってもいい。
伊吹が穂積のような力を有していなくてもいい。この先、周りの期待に添えぬお役目となってもいい。役目を投げ出す無責任な大人になっても、かまうものか。たとえそうなったとしても。

「俺は嫌わない。失望なンてしない」

この子どもの優しさを知っている。魂の温かさを知っている。それを自分に向けられたときの喜びを知っている。
随分やきが回ったことだと自嘲する。この子どもの、底抜けの間抜けさが、認識の甘さが、瑞には心底心地よいのだ。

「約束する」

小指を突き出す。絡める。ぎゅうと結ばる指から、力がわいてくるような気がする。

「・・・うん、」

指きりの約束。こんな子どもじみた小さなことでも、伊吹にとっては大きな支えとなるのだということも、瑞は知っている。

「ありがとう、」

へらりと笑う頼りない表情に安堵する。いつだって、瑞をほっとさせるのは笑っている伊吹なのだった。

「あ、朋尋・・・」

金物屋の角を曲がって、朋尋がやってくる。

「伊吹、おはよう!」

いつもの笑顔で。大きく手を振りながら。元気そうだ。少しだけ憂いの残る表情は、別れを経験して、昨日よりも少しだけ大人になったからだろう。それでも、駆け寄ってきた朋尋の目は、もう彼方を見てはいない。まっすぐに、いまを生きようとする目だった。