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「思ったんだ･･･なんていうか、すごく傲慢だなって。朋尋に対して、まるで自分が生も死もすべてわかりきったような言い方をしたと思うんだ」

瑞は思う。生死の境目、その曖昧なほころびに目を向ける特殊な役目を持つ人間だからこそ忘れてはいけないものを、まだ幼い伊吹はちゃんとわかっているのだと。いや、おそらくぼんやりとした言葉でしか説明はできないだろうが、本質は理解しているのだろうと思う。

生の持つ強さと、そこに対に存在している弱さや儚さを忘れてはならないこと。
死を、軽んじてはならないということ。
その二つの狭間に立つ者として、決して力に酔いしれて万能感に支配されてはならないこと。

「ヒトの生死って、こんなふうに言葉を通して語るようなものじゃないのかもしれない。言葉にすればうそ臭いし、きれいごとに思えるんだ。大切なひとを失ったひとにしかわからないことは絶対にある。痛みを正確に言葉にできないのと同じで、悲しみの深さなんて、どうやったって他人に理解できるはずがない。なのに俺は朋尋に、お説教じみた言葉で理屈を押し付けた」
「･･････」
「朋尋がいなくなったら嫌だから･･･それは俺の都合。何が朋尋の幸せなのか、それは無視したことになるんだ」

しょげた声に少し苛立つのは、この主が自分を無力で無知だと思っているからだろうか。違う、あまりに自分に自信がないからか。

「･･･おまえさあ、」
「･･･？」
「朋尋の幸せが、あの子のもとへ行ってしまうことだったなンて、本気で思うのか？」
「それは･･･」
「間違ったことなどしてない。朋尋だっておまえに失望などしない。それでも余計なことをしたと朋尋が言うなら、俺がブン殴る。あいつはいいやつだけど、おまえの言葉がなに一つ届いていないのなら、俺の見込み違い。親友失格」
「･････瑞、」