花は流れて 続・神末家綺談4
選べぬ未来
「本当に・・・これでよかったのかな、」
寂しそうに呟いた主の横顔を見る。二人は神社に続く石段に腰掛け、朋尋を待っていた。朝ここで待ち合わせて、二人はバス停に向かうのだ。
昨夜、朋尋は帰ってきた。生きている世界へ。くたびれ果てて言葉少なに別れた後、朋尋が一夜をどういう思いで過ごしたかわからない。ただ、もう彼女への思いが完全に断ち切れていることが瑞にはわかった。
「これでよかったって、昨晩のことか」
「結果オーライとは、言いがたいよね・・・」
伊吹が自分を責めている。どうにかして親友の目を覚まさせたくて、がむしゃらだったのだと言う。心無い言葉で、彼を傷つけたのではないかと心配しているのだ。
「俺、朋尋に残酷なこと言ったと思う・・・」
「事実だろう」
「でも・・・」
瑞からすれば、見当違いも甚だしい心配だと思う。朋尋を助けたのだから、感謝されることはあっても、文句を言われる筋合いはないだろうに。
(このへんが俺の、穂積の言う<感情の機微に疎い>ってことなのだろうな・・・)
伊吹の落ち込みが、まだよく理解できない。伊吹の朋尋に対する「相手を深く思いやるということ」が、複雑で難しい。あぐらをかいた足の上に肘をつき、瑞は伊吹の次の言葉を待つ。
作品名:花は流れて 続・神末家綺談4 作家名:ひなた眞白