花は流れて 続・神末家綺談4
<校庭のコスモスが咲いているよ。図書室からも見える。きれいだね・・・>
いつかの机でのやりとりを思い出し、朋尋は膝を抱えて屈み込む。
もう会えなくても。二度と触れなくても。
邂逅は嘘ではなかったこと、同じものを見て、心を通わせていたこと。
それは事実で、消えないのだと。
このコスモスが言っている気がした。
幸せになって、と彼女は言った。このさき、大人になっても、他の誰かを好きになっても、この言葉を忘れないだろう。朋尋はそう思った。
「・・・さよなら、」
好きだった、年上の女の子。
朋尋はそっと指先で、コスモスの花びらに触れる。
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作品名:花は流れて 続・神末家綺談4 作家名:ひなた眞白