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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 続・神末家綺談4

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「美月さん、」

向こう側の気配が、音もなく消えていくのがわかった。

「美月さん・・・」

行ってしまった。ここにはもう、朋尋しかいない。会えないのだ。もう二度と。
朋尋は立ち尽くす。いまやっと、伊吹が言っていた意味を本当の意味で理解した。

絶対的な境界線を。
必然的な別離を。

これが生と死だ。どんなに希っても、もう彼女と同じ時間軸に立つことは二度とないし、同じ景色を見ることもないのだ。この書架が境界だった。書架を隔ててこんなに近くにいたのに、こちらとあちらは別の世界だった。到底届かない場所だったのだ。

打ちひしがれて、書架から手を離したそのとき。

「・・・あ、」

背中に、トンと何かが当たった。そして朋尋の手に、静かに触れるもの。ぬくもり。やわらかな指の感触。

――友だちになってくれて、ありがとう。さようなら、朋尋くん・・・

しん、と沈黙が落ちる。背中に触れていたものが、静かに遠ざかる。彼女だったのだろうか。刹那に触れた、最初で最後の邂逅。

「これ・・・」

手にあるものを見ると、一輪のコスモスだった。