花は流れて 続・神末家綺談4
じんわりと胸が温かくなって、そして涙が滲む。悔しいと思った。泣きたくなんてないのに。自分よりつらい思いをしている女の子の前で、もっとしっかり立っていたいのに。
――朋尋くんのおかげで気づけた・・・弟が、ずっとそばにいたこと
「そばに・・・いるの?」
――わたしの瞳が、心が、悲しみに曇っていたから見えなかった。感じられなかった。弟はいつもそばにいたのに。わたしは自分を責め続けて、彷徨うしかなかった
己を責め、絶望の果てに傷ついた魂。どれだけの時間を苦しんできたのだろう。
――朋尋くん言ってくれたね。悪くないよって。十分悲しんだのに、自分を責める必要なんかないないって
「でも・・・そんなのは所詮綺麗ごとだ。俺にあなたの苦しみを理解して、慰める資格なんてなかったのに」
弟を失った苦しみや、己を責めたままあちらへと渡ってしまった彼女の痛みなど、生きている朋尋に、理解できるはずがなかったのだ。ましてや癒すことなど、救うことなど。
――それでもわたしは救われたの。あなたがあの日、メッセージに気づいてくれて。一人ぼっちの暗闇から、抜け出すことができた・・・ありがとう
ありがとう、とその響きは優しくて、姿は見えなくても柔らかな笑顔を連想させる言い方で。彼女は救われたのだと、朋尋はやっと確信することができた。
――朋尋くんのこと、忘れない。幸せに、なって
わたしが見られなかったものを見て。聞いて。感じて。触れて。生きていてよかったと思えることをたくさん見つけて。幸せになって。
作品名:花は流れて 続・神末家綺談4 作家名:ひなた眞白