花は流れて 神末家綺談4
<サッカー得意なの?いいなあ。わたしはスポーツは見るほうが好き。得意じゃないの>
<テスト100点おめでとう。すごいね>
<学校楽しいんだね。よかったね。お友達もたくさんいるみたいで羨ましいな>
<朋尋くんが教えてくれたテレビ、今度みてみるよ>
<校庭のすみに、コスモスがさいたよ。きれいです。図書室からも見えるでしょう>
<わたしも男の子だったらよかったなあ>
と、いったように。
相手は年上の女性なのだから、教師の中の誰かだろうと予想をつけていた。こんなばかな遊び、何が楽しいのだろうかと思っていたが、朋尋が書けば丁寧に返事をしてくれる、それがなぜだか嬉しかった。
<あなた先生でしょう。俺のこと知ってて、遊んでくれてるの?>
ある日そんなふうに書いてみた。こちらは名乗っているのだから、教師が相手なら朋尋が馬鹿正直に返事を書くのを面白がっていることだろう。しかし。
<わたしは先生ではありません>
教師ではない?では誰なのだろう。
<内緒です。そのほうが、楽しいでしょう?わたしと朋尋くんだけの、秘密>
秘密、という響きがすっかり朋尋を虜にしてしまった。そして、秘密の机上文通は続く。ひっそりと、放課後の夕闇の中で。
作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白