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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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あちらがわ



「委員会の作業で、一人で残っていたときに見つけたんだ・・・」

朋尋がことの次第を語り始める。伊吹は彼の向かいに座り、机上の文字をなぞり始める。


<だれか、お話しませんか>


その日、朋尋はそれを見つけた。薄暗い書庫で、一人残って作業をしているときだった。机の上に長年積み上げられていたであろう本の山を崩してしまい、埃をかぶってしまった。委員長らは六年生は会議へ行ってしまったし、他の委員は隣の図書室の整理をしている。とんだ貧乏くじを引いてしまったと、制服の埃を手で払って憤っていたときだった。

傷だらけになった木製の長机に、かすれた鉛筆で文字が見えた。

(なんだ、これ。落書き?)

いやにきれいな字だった。小学生が書いたとは思えないから、教師だろう。
その文字の下に、手にした鉛筆で面白半分に返事を書いてみた。

<俺でよければ。4年2組の佐倉(さくら)朋尋です>

ばかばかしいと思いつつ、幾ばくかの面白さを感じた朋尋は、翌日の放課後、再び書庫を訪れた。夕闇に沈む書庫の机を見ると、朋尋が書いた返事の下に、新たな書き込みがあったのだという。

<お返事をありがとう。気づいてくれてうれしいです。朋尋くん。4年生なんですね。わたしは朋尋くんよりお姉さんです>

おお、と小さく感動した。まさか本当に誰かが書き込んでいたとは。咄嗟に返事を書いた。それから毎日放課後、書庫へ行けば朋尋の言葉に、きちんと返信がされていた。