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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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「・・・それから、毎日やりとりをしてる」
「だめだよ朋尋、こんなことやめないと・・・」

話を聞いた伊吹の本能が、これはとても危険な行為だということを告げていた。机上文通が危険だというのではない。朋尋に返事を書いている相手が問題なのだ。すでに五時間目の授業は終了し、校内には下校時刻を告げるチャイムが鳴り響いていた。

「だってこれ・・・たぶん、生きてるひとじゃないよ、朋尋・・・」
「寂しいと、言ってるんだ」
「え?」
「何かとてもつらいことがあって、寂しくて悲しくてどうしようもないんだって。俺からの返事をずっと心待ちにしてくれているんだ」

しん、と書庫に沈黙が落ちた。これは、だめだ。朋尋の心が、もう半分以上向こう側に傾いてしまっている。

「・・・帰ろう!」
「でも、俺このひとに」
「いいから早くッ!」

無理やりに朋尋の手を引っ張って、伊吹は書庫から出る。

「・・・死んでるのか?あの人は」
「・・・うん」
「伊吹には、わかるんだな」
「・・・返事をしちゃいけなかったんだよ。あれはね朋尋、あの世からの言葉なんだよ」

向こう側から届いたメッセージだ。文字には生気が感じられない。死んでいる文字だ。言葉はあたたかくとも、その筆跡の冷たさは死者の気配と同じだった

「そうか・・・でも、やめられないんだ・・・」

朋尋がぽつりという。だめだ、これはとりつかれている。このままでは、朋尋の心ごと、ごっそりと持っていかれてしまう。